エンタメ力向上計画!!~「面白さ」 を作り出すレイヤーの違いを見分ける〜

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みなさんこんにちは。美少女プロジェクトチームから再びイワサです。最近美少女プロジェクト専用の名刺を作りました。マスコットキャラクターのモバミちゃんがデカデカと掲載されているものです。お客様との打ち合わせの際、名刺を出すと苦笑いされたり爆笑されたりします。

 

さて、美少女プロジェクトチームでは業務の一環で、毎月、主に漫画とライトノベルを対象に、エンターテイメントを理解・科学するという目的で、テーマ性をもって作品を紹介する取り組みをしています。

 

前回に引き続き、今日もいくつかご紹介したいと思います。是非連休中に対象図書を読んでみてください!

 

「面白さ」を作り出すレイヤーの違いを見分ける

『たとえ同じモチーフでも、いろんなやり方で面白さを作りだせる。そして、そのやり方は科学できるはずだ』これは持論のひとつなのですが、そんな持論を適用した事例のひとつとして、今日はスポーツ漫画における「面白さの3レイヤー」についてお話したいと思います。

新しいスポーツが生まれる事はほとんどないですが、新しいスポーツ漫画は毎年のように生み出され、常に大きなヒットジャンルとなっています。例えば野球では「タッチ」「ドカベン」「グラゼニ」「ダイヤノエース」・・・数え切れないほどのヒット作品があります。どうやって、同じモチーフを使いながらも毎回異なる面白さ・新しい魅力を提供しているのでしょうか?

この答えのひとつが、モチーフ(この場合は「スポーツ」)を異なる視点(レイヤー)から捉えることで、異なる種類の面白さを抽出するテクニックです。私は、スポーツ漫画の場合は大きく「戦略」「戦術」「キャラクター」の3レイヤーに分かれると考えています。

 

  • 戦略レイヤー ・・・ 複数の試合、チームメンバー全体を俯瞰した上での組織運営を描く。組織として勝利に向かって努力する様、苦労する様を描く事で魅力的な社会的ストーリーを作り出す。

  • 戦術レイヤー ・・・ 個別の試合における少数のプレイヤー(主役・準主役)の試合における動きや心の葛藤を描く。特定個人の勝利、挫折の様を描く事で、魅力的なヒーロー的ストーリーを作り出す。

  • キャラクターレイヤー ・・・ 試合はあくまでも背景でしかなく、非常に個性的で魅力的なキャラクター(敵・味方問わず)の活躍を描く。キャラクターのファンを作り出す事に重きを置く。

 

最近の作品の中で、戦略レイヤーで成功したのが講談社アフタヌーンKC「大きく振りかぶって」(ひぐちアサ)です。

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高校野球の3年間を振り絞って戦い抜く野球部内でのドラマを描いています。典型的な高校野球漫画と異なり、主人公は必ずしも活躍せず、ベンチ入りもするし、怪我で長期退場もします。また、チームメイトのみならず、OBや先輩から代々受け継がれる甲子園への執着に紙面の多くを割いています。

それだけに、試合運びの緊張感(「最後に主人公が活躍して勝つお約束なんて期待できない!」)と、高校野球にエゴをぶつける人々の思惑を生々しく描く事に成功しており、今までにない高校野球漫画となりました。

戦術レイヤーでは、講談社マガジンKCBaby Steps」(勝木光)が、テニスを心技両面で描く事でテニスの魅力を表現する事に成功しています。本作は高校からテニスを始めた主人公が、「テニスにおける試合運び」を深く理解しながらプロテニスプレイヤーを目指す物語です。

圧巻なのはその分析描写の深さです。打つ球一球一球のコースやスピード、そしてその背景にあるプレイヤーの疲れ・焦り・不安・自信・・・等のメンタルステータス。こういった試合中の心と体を徹底的に描き切ることで、単調になりがちなテニスの試合描写を非常に魅力的に描く事に成功しています。現在NHKでアニメ放映中ですのでぜひ見てみてください。

キャラクターレイヤーの中でも特に紹介したいのは秋田書店コミックス「弱虫ペダル」(渡辺航)です。この作品は、とっつきにくいマイナースポーツをモチーフにしながら、圧倒的に魅力的なサブキャラクター陣を多数用意することで、人気獲得に成功しています。例えば、冷たく自己中に見える外見なのにどこまでも熱い心で主人公を見守る巻島や、一見自転車競技をバカにしているように見えるが実は誰よりも命を懸けている御堂筋等、中身と外見のギャップの激しいキャラクターが多数登場することで、読者の興味のフックをうまく作り出しています。

 

MMORPGモチーフはなぜ増えた?

さて、話は変わって今度はライトノベルです。今度2期も放映するKADOKAWA電撃文庫「ソードアート・オンライン」(川原礫)をはじめ、NHKで放映中のKADOKAWA富士見書房「ログ・ホライズン」(橙乃 ままれ)等、ライトノベル界では現実世界の主人公が、ある日突然MMORPG(オンラインRPG)の世界に飛ばされた・・・というようなストーリーが多数人気を博しています。感覚的には常に新刊のうち2~3冊はMMORPGモチーフのものが出ている感じです。なぜこんなにも人気なのでしょうか?

 

その理由として、私は大きく3つの理由があると考えています。

 

  • MMORPGの“お約束”や基本設定がストーリーを構築しやすい ・・・ 魅力的なキャラクターやバラエティ豊かな舞台設定、ドラマになりやすいルール・リソース(例えば魔法、魔族)がすでに用意されているため、物語を作りやすい

  • MMORPGが一般化してきており理解しやすく感情移入しやすい ・・・ 多くの読者が既に知っているモチーフのため、コンテキストを理解しやすく容易に感情移入できる

  • HEROS JOURNEY(英雄の旅)というストーリーの基本構造を組み込みやすい ・・・ ドラマティックなストーリーの基本構造をきれいに当てはめることができる

 

上記3点目にある「英雄の旅」について少し補足すると、「英雄の旅」とは、米国の神話学者であるジョセフ・キャンベルが提唱した、神話に共通するストーリーの骨組が元となり、ハリウッドでのシナリオ構成のベースとなった基本構造を指します。この基本構造を踏襲する事で、文化的世代的な偏りなく面白い物語を作る事ができるので、スターウォーズやロード・オブ・ザ・リング等は、綺麗にこの構造をたどっています。

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MMORPGをモチーフにしたライトノベルの多くは、現実の世界からゲームに飛ばされた主人公が、元の世界に戻るために仲間を集め、強大な敵を倒し、そしてゲームの世界で大事なもの(仲間や恋人)を獲得しながら現実の世界に帰還するのですが、これは「英雄の旅」のストーリーにぴたりと合致するのです。

では、これらMMORPGモチーフのライトノベルはみんな同じような面白さを提供しているのか?というと、それはまた違うのです。スポーツ漫画の時と同様に、それぞれ異なるレイヤーで面白さを出そうとしています。

例えば「ソードアート・オンライン」は「ゲーム中の死は現実世界の死」という緊張感ある設定を用いて、熾烈な生存競争とその状況で得られる愛憎劇を描いています。一方で「ログ・ホライズン」は「ゲーム中は決して死ねない=必ず生き返ってしまう」という設定の中で、自堕落に停滞した世界を変えるための社会変革を描いています。言い換えるならば、「ソードアート・オンライン」が個人の生き死に(戦術レイヤー)を、「ログ・ホライズン」が社会の成り立ち(戦略レイヤー)で物語を描いているのです。

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エンタメ向上計画?

・・・ということで、今日は面白さのレイヤーをテーマに、スポーツをモチーフにした漫画とMMORPGをモチーフにしたライトノベルについて分析してみました。こうやって見てみると、世の中には同じモチーフを使いながらも様々な面白さが表現されており、まだまだこれからも新たなヒットコンテンツを生み出す余地が大きい、そう感じられます。

 

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