ゲーム開発現場で泥臭くUXデザイン的アプローチを試みているお話(第1弾)

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こんにちは!デザイン戦略部の@mt_takao(食べられている方)です。

前回の「ただの進行管理の人で終わりたくない! ディレクターのためのUXデザインノウハウ」の続編としまして、現在、私が参画しているとあるゲームアプリ開発プロジェクトで現在進行形で実践中のUXデザイン的なアプローチをご紹介します!


なお、今回は、ターゲットユーザーの選定、ペルソナ設計あたりのお話がメインになっています。

 

■まずはターゲットユーザーの検証

私がプロジェクトに参画時点で、既にアプリの企画とターゲットユーザーの大枠は決まっていました。

「なんだ、もう決まっているのなら、これでいいじゃん!」

 

・・・そんなことないですよね。

 

既に想定されていたターゲットユーザーは、定性面から定義されていたということだったので、まずはじめに、本当にそのターゲットユーザーがいるのか?どれくらいいるのか?勝負できる市場なのか?といった点を定量面からも検証することにしました。

具体的には、世の中に出回っているありとあらゆる統計データをかき集め、フェルミ推定を用いてターゲットユーザーの市場規模を算出しました。

また、後々のペルソナ設計用に使うために、ゲームに対する趣味や嗜好等といった情報についても、この時集めています。

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(収集したデータの一例)

  • 日本の総人口(人口ピラミッド)

  • 生涯未婚率

  • 社会生活基本調査(3次活動に費やす平均時間)

  • 好きなゲームジャンルの割合

  • 都道府県別スマートフォン所有状況

  • 各種定性データ(アンケート等)

 

上記のようなデータから判断した結果、想定していたターゲットユーザーはちゃんと存在し、勝負できる市場であると分かり、安心して次のステップへ進むことにしました。

 

■ペルソナ設計(α版)

想定ターゲットユーザーがある程度勝負できると判断した時点で、収集したデータを参考にしながら、ペルソナ設計を行いました。

具体的には、UXデザイン定義書なるドキュメント(後述)を作成しましたが、この時点では、ざっくりα版として作成しています。

 

■モチーフテストで定量調査

続いて、UXデザイン定義書内でα版として定義したペルソナの属性に近いユーザーに対して、グラフィック(GUIデザイン)の方向性を決めるためにアンケート形式で定量調査を行い、目指すべきグラフィックの方向性と、定義していたペルソナから大幅なズレが無いかを確認しました。

これにより定量面でもターゲットユーザーをより明確に把握することができました。

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なお、この調査では、ターゲットユーザーがどのくらい存在するのか、フェルミ推定で算出した市場規模とのギャップはないのか等の検証も合わせて行っています。

 

■アイデアテストでアプリのコアコンセプトが刺さっているかを確認

ここまでの検証や調査で、ターゲットユーザーを明確にできたので、次は、そのターゲットユーザーにアプリの企画(コアコンセプト)が刺さるのかを確認するために、再び、定量調査を行い、調査結果から、ユーザーニーズとコアコンセプトに大幅なギャップが無いことが分かり、当初、想定していた企画で開発を進めて行くことにしました。


■ユーザー理解インタビューで定性調査

さて、これまでのプロセスで、ターゲットユーザーも明確になり、考えていたコアコンセプトも刺さっているし、後はひたすら開発するだけだ!と、思うかもしれませんが、そんなことはないです。


何かが足りないのです。それはなんでしょう?


そう、ターゲットユーザーの事を表面上でしか理解できていないのですね。

このままでは、実際のユーザーの行動とかけ離れたユーザーストーリーを設計することになってしまうと考え、次にユーザーインタビューを行い、ターゲットユーザーの嗜好性やライフサイクル、時間の使い方、ユーザーがアプリに求めるものの確認をしました。

(当社のインタビュールームです。)

(当社のインタビュールームです。)

この時は、ペルソナで定義したユーザー属性に近い、3パターン合計7名の方に来ていただいて、実際にインタビューしました。

このユーザーインタビューの結果を踏まえて、UXデザイン定義書内のユースケースの見直しや、アプリ内に組み込もうとしていた機能を削除する等、ユーザーの行動実態にあわせて、修正を行いました。

もちろんUXデザイン定義書もアップデートをかけていて、この段階で現在の形に近いものになっています。

 

 

※アップデートの際、今まで得られた情報を材料として、構造化シナリオ法やラダーリング等の手法を活用しながら、ユーザーの潜在ニーズも抽出・仮説立てしています。

 

この段階に来て、ペルソナ設計としては、一旦、完了となります。

 

■UXデザイン定義書の話

ここでペルソナ設計時に活用したツールであるUXデザイン定義書を簡単に紹介します。

UXデザイン定義書は、元々、ジェネシックスさんで活用されていたものを、DeNA用に少々カスタマイズしたものを使いました。

※参考:UXデザインを共有するためのテンプレート UXデザイン定義書

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UXデザイン定義書の記載事項としては、大きく4つあります。

 

  • アプリケーション定義ステートメント

    • アプリケーションの主要な目的とその対象を、簡潔かつ具体的に宣言したもの

  • ビジネスプラン

    • 市場ポジショニング分析×SWOT分析、ビジネスモデルキャンバスと考え方が近い

  • ユーザーモデル

    • ペルソナ設計用

  • UXデザインコンセプト

    • ユーザー体験の提供方法の方向性を記述

 

そのうち、「ユーザーモデル」にペルソナに必要な各種情報を記述していきます。

具体的には、

  • キャスト

    • 名前、イノベーター理論における分類、ゲームプレイサイクルにおける分類等

  • 写真

    • ペルソナがイメージしやすい写真

  • デモグラフィックデータ

    • 年齢、性別、職業、居住地

  • サイコグラフィックデータ

    • 人物像、性格、価値観、趣味、ライフスタイル等

  • 本質的な欲求

    • アプリで体験したい深層心理にある要求(○○したい、○○になっていたい)

  • 具体的な欲求

    • 本質的な欲求を実現するための要求(○○する)

  • ユースケース

    • アプリが使われるシーンやシチュエーション

  • 必要な機能、コンテンツ

  • 不必要な機能、コンテンツ

 

一通り記述し終わったら、チームメンバーで共有します。

プリントアウトして、MTGスペース等に貼っておくと尚良いです。

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開発をしていく中で、迷ったりしたときは、「ターゲットユーザーだったらどう思うか?」という視点を忘れないようにするために、このUXデザイン定義書を活用してます。

 

<↓↓↓ここからちょっとおまけのお話(マーケティング寄りのネタ)↓↓↓>

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UXデザイン的なアプローチをする上で意識している点があります。

前回の記事でもありましたが、線で考えるという点です。

 

■UXジャーニーの活用

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ユーザーの行動を線で考える上で、UXジャーニー(UXマップとも呼ばれている)を活用をし始めています。

※参考:User Experience Journey Map - ユーザーエクスペリエンス・ジャーニーマップ

現在もまさに試行錯誤の途中ですが、UXジャーニーを活用して、アプリ内の行動だけではなく、アプリ外のユーザーの行動にも、ちゃんと目を向けようとしています。

例えば、プロモーション企画やゲームのレベルデザイン、ユーザー間の共有の仕組み作り等でどんどん活用していく予定でいます。

ちなみに、ベースとなる考えは、SIPS理論に近いと思っています。

※参考:SIPS ~来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念~

 

■マーケティング関連の定量調査

ターゲットユーザーが明確になった後に、マーケティング活動の材料を集めるために定量調査を行っています。

○コンセプトテスト

アプリの推しポイントの中で、どれがターゲットユーザーに刺さるのかをアンケート形式で調査しました。

この調査結果を踏まえて、現在は、プロモーション企画を検討しています。

○キークレームテスト

アプリのコンセプトを表現しているキャッチコピーの中で、どれがターゲットユーザーに刺さっているのかをコンセプトテスト同様、アンケート形式で調査しました。

この調査で得られた結果に関しても、マーケティング活動やプロモーション企画に活用していく予定です。

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<↑↑↑おまけのお話終わり↑↑↑>

 

■結果として、リーンUX的なアプローチに!

実は、私自身、最近までリーンUXの考え方を理解していなかったのですが、定性・定量調査を活用しながら、ペルソナの精度を高めていく感じがまさにリーンUX的アプローチだと途中で気づきました。

なお、今回、あまり深く触れてはいませんが、アプリの企画や仕様に関しても、ターゲットユーザーのことを明確にしていくにつれて、結構な頻度で変更されています。

ちょっと余談になりますが、多々あった変更の中でも、1番インパクト大きかったのがコアコンセプトの変更でした。

企画を詰めていく段階で、このままではユーザーの求めているものが作れないのではないか?という話になり、チームメンバー全員で徹底的に議論し、当初掲げていたコアコンセプトの見直しを行い、現在のコアコンセプトを導き出しました。

若干、非効率なやり方になり、課題もありましたが、この時決めたコアコンセプトは、共通認識としてチームメンバーで共有できており、ブレずに開発を進めて行くことに役立っています。

そして、なにより、ユーザーのことを最大限考えて導き出されたものなので、その点がとても良かったと思っています。

 

■なによりユーザーのことを理解しましょう

ここまで、主に、ターゲットユーザーの選定からペルソナ設計あたりまでのお話をしましたが、既にかなりのリソースを割いて開発を進めています。

 

なぜそこまでやるのか?

 

それは、やはり、どんなプロダクトであっても、それを使ってくれるユーザーがいるからなんですよね。

そのユーザーのことを理解せずに、どのようにしてプロダクトを作れるのでしょうか?満足してもらえるのでしょうか?

自分自身、そう考えながら開発を進めていたら、自然とUXデザインという分野に興味を持ち、活用しようとなったわけです。

ぜひとも、みなさんにもUXデザインを上手く活用して、ユーザーが満足するプロダクトを作っていっていただけたらと思います。


 

次回は、UXデザイン的なアプローチ第2弾としまして、UI設計編を書く予定です。乞うご期待!!!